その他の加工精度・品質について

精密板金の加工のメインは、切断、曲げ、溶接の3つになると思いますがその他にも注意の必要な加工精度、品質があります

「バリカエリなきこと」

この図面表記にはどの加工先も苦労していると思います。どれくらい取ったら良いのか?ということがこの表記ではよくわからないからです。大量に生産されるプレス製品ではこのバリカエリの出方について入念な打ち合わせが行われますが、レーザー加工やタレパン加工の少量〜中量生産においては、細かな打ち合わせが行われないのが現状でしょう。現在はバリ取り機の加工精度もあがってきており、比較的低コストでのバリ取り加工が可能になってきていますが、エンドユーザーの触手部などについては、手加工でヤスリをかけるなどの必要な部分もあります。バリ取りの具合が心配な場合や新規の加工先への依頼の場合は、少量〜中量でもバリ取りの具合について打ち合わせが必要になると思います。

NCT加工

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NCTは、金型になるためダレ側とカエリ側が発生する一般的に製品の表面をダレ側にする。

レーザー加工

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金型の加工に比べるとほぼダレ側は出ない形になる。媒体搬送面等は、注意が必要である。

スプリング穴

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A:特にフックと穴カド間で、こすり合わせの多い箇所に使用します。プレスまたはドリル加工で空けた穴の両面を面取り加工します。レーザー加工の穴もこちらです。
B:プレスで打ち抜いた穴のカエリ側のみ面取り加工するもので、一般的に用いられるコイルバネ掛け穴です。
C:プレスで打ち抜いた穴をばれる加工しただけで、張力変動の比較的少ない箇所のバネ掛け穴として用います。

コイル等のバネ掛け穴については、面取りを注意して行う必要があります。張力変動によりますが、海内工業ではスプリング穴の表記がある時は、左記のようにしています。

レーザー加工の場合はダレ側が発生しますのが、プレス加工の穴に比べてはダレが少なくなりますので、スプリング穴(バネ等を掛ける穴)に関しては、両面の面取り加工が必要になるでしょう。

タップ加工

タップ加工は、最近自動化が進み、ブランク加工時に同時に加工することも多くなっています。また中量品になりますと自動タップ機の方がコスト的に安く早くなる場合もあるでしょう。ここで注意が必要なのは、タップの種類についてです。特に表面処理のある時のタップ加工は注意が必要になります。タップ加工には、大きく2種類、切削と転造があります。この2種類は、共にタップの加工ですが大きく違います。切削は、文字通り削って加工していきます。ですから削り粉が発生します。転造は、削るのではなく、ネジの山を盛り上げてネジ山を作っていきます。
削っていないので削り粉が出ません。タップ不良の原因の一つは、削り粉によるものですので、転造の方が削り粉がでない分不良が発生する確率は減ると思われます。しかし転造にもデメリットはあって、切削よりもトルクがいることや、下穴の加工精度が必要になってきます
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また、大きな径のタップに関しては、並目、細目の種類もありますので注意が必要です。せっかく出来上がったものでも、これが目がちがうために作り直しになってしまうのも非常に残念です。細目など、通常と違う加工の場合は、少し目立つ表記にするか、加工先に一言伝えた方が安全でしょう。表面処理のある場合のタップ加工も注意が必要になります。まず塗装の場合ですが、タップ加工のしたところに塗料がのるとネジがきつくなります、膜厚によってはネジが入らなくなることもあります。この場合がマスキングの表記をしましょう。メッキ処理の場合も注意が必要です。メッキ加工の膜厚は、塗装よりも薄いため細かく管理している加工先も多くはないのかもしれませんが、海内工業では、メッキの表面処理のある製品に関しては、オーバーサイズのタップを使用しています。

バーリング加工

タップ加工とセットになりますがバーリング加工についてです。こちらも気をつける点があります。
まずは、基本的なところですが、凹凸をどちらに出すのか?の表記です。3次元CADが多くなってきたので2次元の図面への表記忘れが少しづつ増えている気がします。

また、位置については、①成形の干渉に関して②曲げ加工の干渉に関して注意が必要です。それぞれ図のような位置が干渉しますので板金設計の際には注意してください。

板厚と成形加工の高さ限界の参考は表の通りになります。
また、位置については、次のような注意が必要です。それぞれ図のような位置が干渉しますので板金設計の際には注意してください。

  1. 成形の干渉に関して
  2. 曲げ加工の干渉に関して

ダボ、ハーフパンチ、dowel加工

ダボ加工は溶接などの正確な位置決めのために必要不可欠な加工になります。ダボの大きさと高さの加工参考は、表のようになります。ダボの成形加工は、はめあう相手の穴とセットの加工になります。ですので加工表記は0/-0.05のような加工表記が多く、相手の穴や長円穴にも、0/+0.05のような表記がされます。
スポット溶接のところでも書きましたが、位置決めの工夫に関してこのダボと穴は重要になりますので、板金設計の際は注意しましょう。また、ダボの加工は、NCで加工している工場が多いと思われます。ダボの方向や大きさは、金型によって変わってきますので、加工先に一度確認すると良いかもしれません。
良く目にする大きさは、φ3.0です。
媒体搬送面であったりすると、できるだけダボの径を小さくしたいなどの希望がある場合もあるかもしれません。その時は、一度御相談ください。

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